玄冬夜 
〜大戦時代捏造噺

  


所属とされた部隊が駐在していた基地は、
どちらかといや南方にあったものの。
出撃先となる戦場は、
おおむね地上から遥かに遠い高層の穹とあって。
防寒のための重々しい装備をまとい、
髪や頬を切り裂くほどもの、
凍気はらんだ飛翔風に叩かれながら。
気を抜けば肺腑までもが凍りつく極寒の宙空へ、
文字通りの命のやり取りを仕合うため、
飛び立ってゆくのが彼らには真っ当正常な日常であり。
翅なき身を臆すことなく風に乗せ、
重い白刃振るっては、
人の身ならざる敵を斬り、敵機を砕きて撃墜する日々。
微かにでも躊躇が挟まれば、こちらが命落とすは必定で。
なればこその必死さから、生き残ることで経験則を高め、
どんどんと人殺しが上達してゆく恐ろしさ。
諦念に心凍らせ、息を詰め、
相手の目に浮かんだ恐怖を踏み越えて、
少しずつ鬼と化してく自分が哀しいか。


  掴まれた手の堅さと強さが、
  どうしてか、深くて熱い安堵を誘い。
  こちらからもむしゃぶりついての、
  情けを下さいと懇願していた。


壊れものでも扱うように…は大仰ながら、
それでも日頃は、そおとそおと触れてくれる、
そんな優しい愛でようをなさるお人が。
今だけは、自分へと力づくでのしかかって来ての鷲掴み。
自身の重みで寝台へと沈み込めての縫い止めて、
強い手で二の腕掴んで抵抗を封じ、
咄嗟に上げ掛けた声は、
咬みつくような接吻でむさぼり食われた。


  荒々しい嵐は、互いの身の裡
(うち)から発したもの。
  他には何も、見えない、知らない、要らない、
  そんな闇の只中へ、容赦なく突き飛ばされたようなもの。


男に組み敷かれ、それが嫌ではない奴なぞ、
きっと蔑んでおられるに違いないと。
何でもない折ほど、
そんな想いが
ちりという痛みと共に胸へと沸かぬでもないけれど。
渋重い雄の香の匂い立つ豊かな髪が肩へとかぶさり、
ずっしりという重みが胸板を押し包んで来、
精悍な手がこちらを求めて掴みかかって来てはもうもう。
頭の芯も体の芯も、
同じくらいに熱く煮え出していて止めどなく。
肌のあちこち、食いつかれる痛さが、
甘く痺れての爛
(ただ)れた熱を放ち始める頃にはもう。
勘兵衛様の肌もまた、同じほど熱いのを感じつつ、
雄々しくうねる筋骨にすがりついて、
もっともっとという貪欲さを止められなくなっており。

  「あ……や、…んぅ…。///////」

膝を割られて体を押し進められ、
身を裂かれるよな痛さに耐えたのも最初のうちだけ。
今は随分と慣れたその上、
そうされると強い刺激に襲われて、
こらえも利かぬままに声を上げてしまうよな、
そんな淫らな身体へと変わりつつあり。
それへの羞恥を感じながらも、

  「……ん、あぁ…っ。///////」

ついの悦音を絞り出せば。
そのままどこぞかへ堕ちかかるのを、
そうはさせぬと引き留めるよに、
雄々しい腕が、支えてくれる。
深い懐ろへと引き込んで、
離すものかと抱え込んでくれるので。
ああ、いっそこのまま食ろうてくださいと、
あなたの血肉になった方が気も楽だと、
そんな妖しいことまで、思わないでもないのだけれど。

  「あっ、あ…あぁっ。やぁ……あ…。////////」

ぐいぐいと割り入り、
その圧にてこちらの悦を、容赦なく引っ張り上げる彼の人は。
人をさんざん取り乱させておきながら、
自分はせいぜい、息が荒くなる程度。
そんなの何だか癪なので、
この昏い双眸に熱の火が灯るまで、
こうして向かい合っていようと決めていて。


  玄冬の夜陰には底がなく。
  堕ちるなら何処までもと、
  互いの眸の底、見据え合う……。





  〜Fine〜  11.01.14.


  *いやもう、寒い日が続きますよね。
   久々に裏っぽいのを書いてみようかと気張ったものの、
   頭が風邪で ぼへ〜っとしているもんだからか、
   閨房話も何だかピンぼけ気味です、すいません。

めるふぉvv**ご感想はこちらへ

ご感想はこちらvv


戻る